理学療法を再考するブログ

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筋力低下を再考する PART1

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おはようございます。

今回は臨床の中でもかなり相対する事の多い「筋力低下」について考えていきたいと思います。

 

はじめに結論を言います。

【筋力低下とは現象であり、原因ではない。筋力低下を起こしている原因を見つける事こそが重要なのである!】

 

さて、僕の周りでは

「中殿筋の筋力低下があるから歩く時にトレンデレンブルグ徴候がでるんだ」

「足の筋力が足りないから立ち上がれないんだ」などの話をよく耳にします。

僕も以前はそのような考えを持っていましたし、上手く動作が行えない要因は筋力低下だ(MMTも3だし!)と筋力トレーニングを行っていました。

 

しかし、ある時TVで拒食症の女性(本当に骨と皮だけで明らかに患者さんよりも筋量が少ない)の密着取材を見ていました。

その女性は日常生活で歩容が崩れることも立ち上がれないなんてこともなく普通に歩いて移動し、階段を上ったりと疲れやすいなどの症状はあるようですが、問題なく生活をしていました。

 

その時に思うわけですね。ん、待てよ…と

明らかに入院している患者さんよりも筋量が少なく骨皮だけの人が若いとは言え、普通に歩いて生活している。

何で患者さんは拒食症の人よりも肉付きがよく、栄養も取れているのに歩く時にあんなに歩容が崩れているのだろう。

これって筋力についてちゃんと考えた方が良くね⁉ 

 

実際、筋力とは筋収縮(随意運動)の一部であるという事を知りました。

具体的に言うと筋収縮には

  • 「空間的要素」=どの筋群を収縮(弛緩)させるのか
  • 「時間的要素」=どのタイミングで収縮させるのか
  • 「強度的要素」=どのくらいの強さで収縮させるのか
上記3つの要素があります。
 
 
僕たちが臨床で評価するMMTは最後の強度的要素としての筋力しかみれていません。ということはMMT5だから歩行が安定するなんて事は言えません。それどころかMMT3だから歩けないと決めつける事も早計です。
何故なら、普段僕たちが歩く時に果たしてMMT5の筋力を使っているでしょうか?
おそらくMMT5もの筋力を使っていたら早々に関節が耐え切れず壊れてしまいます。
 
僕たちが普段歩く・立つという場面で無意識的に筋は制御されており、その時に参加するべき筋肉(空間的要素)が必要な筋力(強度的要素)の分だけ、ちょうどいいタイミング(時間的要素)で収縮します。
 
拒食症女性の筋量が明らかに少なくても生活が出来るのは、体重が軽くそもそも身体を支え/動かす際に必要な筋力が少なくて済み、あとの空間的・時間的要素に問題を持たないためと考えられ、入院患者さんが筋トレで筋量が増えMMT4~5になったとしても歩行に問題が残るのはあとの空間的・時間的要素に問題が残っているからではないかと考えられます。
 
 これだけでも臨床の中で使われる「筋力低下」という言葉が本当に適切なのかどうかを考えてみる価値があるかなと思います。
 
さて、一段落着いた感じもなんとなくするので一旦ここで区切ります。
 
次のPARTでは筋力低下の要因について触れていきたいと思います。