理学療法を再考するブログ

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筋力低下を再考する PART2

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おはようございます。

さて、前回はTVで見かけた拒食症の女性から臨床の中で相対する筋力低下に疑問を持ち筋力について調べた結果、筋力は筋収縮(随意運動)の一側面であり、筋収縮には3つの要素(空間的要素・時間的要素・強度的要素)がありますというお話でした。

歩く時などにその3要素がしっかり機能していないと例えMMT5であったとしても歩容は崩れる可能性があるという考えを述べました。

 

今回は筋力低下について掘り下げていきます。

そもそも筋力低下とは何故起こるのでしょうか。

その答えは1つだけではありません。PART1の冒頭でも言いましたが、筋力低下とは結果であり、原因そのものではありません。
例えば、筋力低下と言っても様々な要因で引き起こされます。
  • 筋の過用症候群
  • 筋アライメントの捩れ
  • 外傷等による筋損傷・萎縮
  • 疼痛
  • 栄養状態や循環動態の不良
  • 脳卒中による上位中枢、末梢運動神経の障害
  • 皮膚や結合組織の滑走性低下
などなど、一概に筋力低下と言っても要因は様々です。
 
 仮にスポーツ選手が練習でオーバーワークを行い、過剰な筋損傷による筋力低下であれば必要なのは筋トレではなく、休息になるわけです。要因によって対応する方法が異なってくるわけですね。
これだけでも、「筋力低下だ!」⇒「筋トレだ!」とは一概には言えない事が分かります。
また、筋収縮が正常に起こらないという事は筋紡錘やゴルジ腱器官などから脳へ届く情報にもエラーが起こることが予測されます。
脳は運動を起こす前にフィードフォワード(以下;FF)として運動プログラムの中にフィードバック(以下;FB)としての感覚情報も予測しています。(こういう運動をしたらこんな感じの感覚が返ってくるよね。という感じで)
 
これは脳の中にある今までの経験を蓄積した情報による予測なので、例えば怪我をした事により十分に筋収縮が行なえず、脳が事前に予測した感覚と異なった情報が(筋紡錘やゴルジ腱器官から)返ってくるので、運動にもエラーが起こってしまいます。
これによって筋収縮の3要素(空間的要素・時間的要素・強度的要素)が阻害され、結果として臨床で良く使われる筋力低下(現象)が引き起こされます。

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健常時はFF(感覚予測)とFB(実際の感覚)が一致。

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受傷によりFF(感覚予測)とFB(実際の感覚)に齟齬が生まれ、脳が混乱する。

しかし、脳は多少いびつで非効率で負担があろうとも運動戦略を変容させ、目的を達成しようとします。これが繰り返されると身体の故障に繋がるわけですね。

(ex.階段を昇りたいけど股関節が思うように動かない。仕方ないから骨盤を目いっぱい挙上して昇ろう⇒腰部への負担・破損)

 

こうなってくると動作を阻害する原因として使用する「筋力低下」は言葉としてあまり正しい使い方ではないのかなと思います。

この場合、「筋力低下」ではなく認知運動療法でも使われる「運動戦略の異常」という言葉の方が僕個人としてはしっくりきます。

 

さて、筋力低下を再考するというテーマから運動戦略の異常という言葉に行きついた所で区切りとします。

次回のPARTでは筋力低下を運動戦略の異常と捉え、どのように介入を行うべきかを考えていきます。

 

それでは、また次回!

 

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